財務情報

株取引を行う上で重視しなければならないファクターは非常に多く、それゆえ株式売買を日常的に行っているトレーダーさんは日々の研究を怠ることができないわけですが、そうした数あるファクターの根源的なファクターとなるのが、銘柄の「財務情報」ということになります。

もちろん、各銘柄の財務情報だけを参考にして株価のトレンドを判断することは不可能ですが、しかし、この情報に何らかの大きな情報が加えられたときには、株価も当然敏感に反応を示すことになります。

とにかくいろいろ考えられる株取引のための情報の中でも、銘柄の財務情報に関しては、できることならリアルタイムで参考にしておかなければならない情報であるということになります。

ただ、事実上銘柄の財務情報をリアルタイムで把握するというのは不可能です。

そこで、定期的にチェックを入れる、あるいは、その銘柄の株を買いたいというタイミングには、改めてその銘柄の財務情報にチェックを入れておくといった作業が必要になります。

そういうときに便利になるのは、いうまでもなく「会社四季報」になります。おそらく実際に会社四季報を活用して、リアルタイムに近い環境で各銘柄の財務情報を精査しているトレーダーさんは多いのではないでしょうか。

中長期的投資において、銘柄の財務情報はもっとも基本的にデータになるのは当然のことですが、スィングトレーダーさんやデイトレーダーさんなど、超短期~短期投資・投機を主戦場としているトレーダーさんの場合、財務情報はあまり参考にしないという人もいるようです

しかし、トレンドがもっとも敏感に影響を受けるのが、財務情報であることは間違いなく、もちろんそうしょっちゅう起こることではありませんが、財務情報が原因でトレンドに何らかの変化が現われたとすると、これは短期的投資・投機であったとしても非常にリスクが高まることになります。

ですから、できるだけ日々の情報を仕入れるようにこころがけるべきであるといえるでしょう。

会社四季報とは?

就職活動をする学生さんにとって必需品とされるのが「会社四季報」と呼ばれる「バイブル」ですが、実はこの「会社四季報」は、就職活動の学生だけではなく、株取引を行うトレーダーさんにとっても「バイブル」となりうる、専門的百科事典です。

つまり、「企業に関するありとあらゆる情報」を知ることができる媒体として、非常に多くの人が頼りにしているのが、「会社四季報」なのです。

株取引をする人の中でも、会社四季報をまったく参考にしないという人もいますが、しかしおそらくは、半分近くの人が会社四季報の情報を参考にして、株取引を行っているのではないかなどと言われています

さすがにデイトレーダーさんやスィングトレーダーさんに絶対に必要なものかといえば、正直「そこまで・・・」という気がしないでもありません。

しかし、中長期的投資をベースとして取引を行っているトレーダーさんからすれば、やはりこの「会社四季報」は、他に類をみない絶対的バイブルとして君臨している情報源と言っても過言ではないでしょう。


さて、その会社四季報ですが、だいたい毎号2000円前後で手に入れることができます。

もちろん、株取引で2000円を目標として取引を行うという人はいないと思いますので、多くのトレーダーさんからしてみれば、それほど大きな金額のように感じられないかもしれません。

しかし会社四季報は、年間トータルで見てみると、例年であれば年間「4部」発行されるということで、税込で考えると、だいたい1万円の出費ということになります。

ベテラントレーダーさんであれば、この分の出費に関しては、ほとんど意識に入れていないとは思いますが、しかし、ビギナートレーダーさんからしてみると、場合によってはこの出費ももしかしたら「もったいない」と考える人もいるかもしれません。

ただ、どうしても会社四季報の料金面が気になるという人であれば、証券会社によっては、その会社でネット口座を開設すると、四季報はすべて無料で閲覧できるというサービスを展開している証券会社も多くなってきていますので、そういった会社と契約するのも悪くないと思います。

自己資本比率が高い企業は安全

自己資本比率とは、会社が所有している資産のうち、株主の出資で購入している資産の割合です。

東証上場企業の平均は35%前後と言われてます。一般にこれが40%以上であれば、比較的財務体質は平均以上に良好であると判断されています。

と言うのも、自己資本比率が高い企業は利益を上げながらも、他からの借り入れに頼っていないことになるからです。

自己資本比率が低い企業はなかなか利益も上げられないのに、他からの借り入れでまかなってきているのです。

企業が倒産すれば株は紙切れになりますから、わざわざそんな企業の株は買いたくありません。有名な企業でも、時々ニュースに出ているとおり倒産しています。

実際、上場企業の2%くらいはこの5年間で倒産しています。投資した企業が50社あればうち1社は倒産しているのですから、意外に多い数字だと思います。

そんな心配を避けるための有効な指標になっているのが、自己資本比率です。自己資本比率が高い企業は、倒産の可能性が低いのです。

60%もあれば申し分ないと言われていますが、高ければ高いほど安全です。90%もある企業だっていくつもあります。そんな企業はそれだけの競争力も認められるべきです。

あくまでもこの先がどうなるかを予測出来る数値ではありませんが、最悪、実績の低い企業に投資するのだけは避けられます

安全第一の投資をするなら、投資する前に一度、自己資本比率をチェックしてから投資するのが賢明な方法です。

株主資本比率で会社の健全性を見る

株主資本比率は、自己資本比率とも呼ばれてます。財務体質の安全性を見る基本的な指標の一つです。

企業の総資本に対する株主資本(自己資本)の割合になります。一般に企業の自己資本は、返済を必要としません。主に株主からの出資による資本金、法定準備金、剰余金等があてられます

また、会計基準が改正されたことにより、新株予約権、少数株主持分も含められるようになりました。

これは純粋な資本ではありませんので、新株予約権、少数株主持分は控除した金額を自己資本比率に反映させるようになっています

株主からの資金調達である自己資本は業績が好調であれば、配当金を支払いますし増配もあります。でも、業績が悪過化したところで、配当金は支払わなければ良いだけなのです。

それに対し、他人資本は業績のいかんに関わらず、利息も加えた上での返済を求められます。銀行からの借入金、社債等があてられます。

株主資本比率が高ければ、金利負担のある他人資本の返済額が少なくなります。であれば企業を経営する上では、安全性が高いと言えます。

そのためには、税引き後の利益である剰余金を増加させること、効率の悪い資産を圧縮するなどをすることになります。

株主資本比率は、業種によってその水準にかなりばらつきがあります。同業種でなければ、比較はしづらいものではあります。

一般的にざっくりとした目安は、50%以上であれば、優良とされています。20~30%くらいでもまあまあでしょう。中小企業になると、15%くらいが普通のようです。

自己資本には、株主からの拠出である拠出資本と事業活動から稼ぎ出して内部に留保している利益とがあります。これらが大きいのですから、それは過去の利益の蓄積も十分影響していると解釈も出来るのです。

それはつまり経営者の経営手腕、財務基盤の安定度の高さ等、あらゆる観点からも会社の健全さをうかがい知れます。

決算は連結決算でなくては意味が無い

連結決算とは、単一企業の決算のみならず、国内外の子会社及び関連会社を含めた企業グループ全体の決算のことです。

企業グループ全体を単一共同体としてキャッシュフローの状況を把握しようとするものです。親会社が代表して貸借対照表、損益計算書を連結財務諸表を公開することになります。

従来、単独決算が主流でしたがその場合、決算の直前になって会社の利益実績を子会社に回したりされる場合もありました

あるいは所有している不動産や有価証券を譲渡しあったりして、実態としての利益が掴めないと言った弊害があったのです。

それが連結決算になると、グループ内における上記のような会社間の取引は、利益から除外されるのです。諸外国では、この連結決算が一般的でした。正式には1978年3月期決算から、連結決算書の作成は義務付けられました。

日本も国際基準に合わせないと競争力に耐えられないと判断されたのです。
ところが、すぐには定着しませんでした。単独決算は重視され続け、連結決算での公開は、あまり行われませんでした。

ようやく2000年3月期から連結決算中心の開示になっています。金融商品取引法が大幅に改正されたところから、連結決算が定着したところです。
今では、投資銘柄を選択するに当たり重要な情報になっています。

連結決算書は、まず親会社が子会社の決算書を収集し、各子会社の決算書を親会社の決算書に合算させます。その後で、グループ内取引による売上、資本の譲渡などの内部利益を除外して完成するのです。

営業利益と経常利益、似てるようで非

営業利益とは、本業で儲かっている金額です。純粋な営業の範疇での利益になります。損益計算書上においては、売上高から売上原価及び販売費、一般管理費を差し引いた金額です。

もちろん、これが高ければ優良企業です。これがマイナスであれば、営業損失を出していることになります。

営業利益を増やすためには、簡単に言えば付加価値の高い製品を販売することです。もしくは一般販売管理費などの必要経費を削減することになります。この金額は、本業の強さを見て取るのに有効な数字となります。

経常利益とは、本業のみならず企業が通常の経済活動で日常儲けている金額です。先の本業での営業利益に、財務活動などの本業以外の損益を合わせたものになります。

預金または借金のの利息、土地を売った利益などが、特別損益として反映されます。この金額は、企業の全体的な体力を見て取るのに有効な数字となります。

営業利益も経常利益も、どちらもよく登場する重要な指標ではあります。経常利益には今季限りの特別利益あるいは特別損失が入っている場合があります。これが大きい場合、一時的には株価に影響があることがあります。

短期で売買をするつもりであれば、特に加味して判断するべき指標となります。それに対し、営業利益は本業の状態を表していますから、比較的長期目線で有効となると言われています。

市場では各企業の利益はある程度予想されています。これらの数値がこの予想より高いか安いかが、株価的には現実的には影響するものとなっています。

キャッシュフローはお金の流れです

経営状況を知るための指標の一つです。一定期間内に入ってくるお金(キャッシュ・イン・フロー)、出ていくお金(キャッシュ・アウト・フロー)とがあります。これをまとめたのが、キャッシュフローです。

決算書の損益計算書に記載されている売上高や純利益等は、実際にはお金は出入りしていない場合もあります

決算書は会計上、許される数値で表されているだけのものとも言えるのです。キャッシュフローでは、現実の経営状況がより分かる仕組みになっているのです。

有価証券報告書等の決算書の中には、キャッシュフロー計算書があります。
そこには営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュフローという項目があります

営業活動によるキャッシュフローとは、実際の営業活動で生んだ利益の金額になります。投資活動によるキャッシュフローとは、設備投資、有価証券投資、企業買収等により出ていった金額になります。

財務活動によるキャッシュフローとは、借金、増資により入ってきた金額、あるいは返済、配当金の支払い等により出ていった金額になります。

一般に株価の上昇が期待出来る企業の場合は次のような特徴があります。

・営業キャッシュフローがプラス、つまり営業実績が良好である。
・投資キャッシュフローがプラス、つまり設備投資を積極的に行っている。
・財務キャッシュフローがマイナス、つまり借入金の返済をしている。

このように分析されます。中長期的に投資をするなら、必須になる指標です。

外国人持ち株比率、これが高いと話が早い?

外国人持ち株比率とは、発行済株式数のうち、外国籍の法人または個人が保有している株式の割合のことです。決算時に作成されている株主名簿から算出しています。

企業によっては、外国人持ち株比率に上限がある場合もあります。それは放送局などのような公益性の高い企業の場合です。主に議決権が与えられる20%以上にはならないようになどの配慮がされているのです。

全体としては、日本の株式市場における外国人持ち株比率は30~40%のようです。外国人持ち株比率の高い企業は、国際的に信用がある企業と言えます。ですから外国人が買う企業に追随するようにして、買う国内の投資家も多いのです。

企業の事情によっては、そうでもないこともあります。単に外国企業の子会社などの関連会社であったりする場合です。

また事業提携などで外国からの出資を受けていれば、外国人持ち株比率は業績に関わらず、高いのは当たり前でしょう。

それに、外国人は必ずしも企業の業績見込みを見て買うとも限りません。キャピタルゲインが狙いだったりもするのです。

こうなると、早々に売られることにもなるのです。外国人は一般に売買のタイミングが早いのも特徴ですから、置いていかれるかもしれません。

算出するのも決算時の資料からですから、大まかにしか分かりません。こうしてみると外国人持ち株比率の高い企業に目を向ける方がいますが、その実は一言で語りつくせないものなのです

売買の判断材料にするのなら、内容を吟味する必要があるのです。

アナリストの役割

ここで言うところのアナリストとは、証券アナリストのことです。株式市場における各企業の業績予想や株価予想を生業としています。

企業は期末決算を発表する時に次期の業績予想(売上高、経常利益、純利益、配当)も発表します。その他必要に応じ、随時業績発表は行っています。

証券アナリストは、企業が開示する財務諸表や経営者の予想さらには業界全体の動向等から独自のレポートをまとめています

企業側から作成した投資情報と第三者目線で作成した投資情報とには、当然違うものにもなります。この違いこそが、アナリストの価値になります。

投資家の求める投資情報と企業側からの投資情報にはギャップが付きものです。この差を埋めるべく存在しているのが、アナリストなのです。

アナリストは時によって各企業の経営者の他にも財務担当者、IR担当者とも面談をしています

その他、市場に散らばっている情報を整理して、各企業のアナリストレポートを作成しているのです。その内容は企業の今期、来期の業績予想、目標株価、投資判断などになります。

投資家はアナリストレポートをどれだけ信頼しているかは、微妙です。参考にはしている投資家はもちろん大勢います。

ところがどんなに投資を勧めるようなレポートを出したところで、直ちに上がるものではありません

それでは長期的にはどうかと言うと、確かに長期的には信頼も出来そうなものです。しかし、株価を取り巻く環境は日々変化していますので、これも何とも言えないのです。

スタンダード&プアーズなどの格付け会社

スタンダード&プアーズは、アメリカ合衆国の格付け会社です。アメリカの代表的株式指数であるS&P 500(スタンダード&プアーズ500種指数)を算出して発表しています。

今では世界の26ヵ国にオフィスを展開していて、世界の各国の信用力を格付けするようになりました。

格付けとは、発行体の信用力に関する格付けです。これを発行体格付けと言います。また、特定の債務に関してその債務者の信用力の格付けもしています。

これは個別債務格付けと言います。このような格付けの対象である債券発行側から、格付け手数料をもらうことで経営が成り立っています

格付けは、債務の履行について現時点での確実性はどれくらいか、事業環境はどうか、財務状況は良好か、経済状況が悪化した場合に債務履行能力はあるのかなどを評価して決めているのです。

以前はサブプライムローン関連債権など多くの債権が、最上級であるトリプルAの高い格付けがなされていました。

ところが金融危機に直面したところで、一気に最上級から最下級への格下げをしました。おかげで金融市場は混乱しました。そこで、格付け会社の責任も問題にされました

そもそも手数料収入で経営している格付け会社が存在することに、懸念も出始めました。そこには不透明性もありました

十分な説明をする責任は問えるのかなどと問題視され始めたのです。アメリカ合衆国議会でそれは取り上げられ、格付け業界には法改正などにより一定の規制をかけられるようになりました。]

ムーディーズの格付けも影響大

ムーディーズはムーディーズは、スタンダード&プアーズと並ぶ二大大格付け会社の一つで、ジョン・ムーディーによって1900年に設立されました。格付けとは、発行体の信用力に関する格付けです。これを発行体格付けと言います。

また、特定の債務に関してその債務者の信用力の格付けもしています。これは個別債務格付けと言います。このような格付けの対象である債券発行側から、格付け手数料をもらうことで経営が成り立っています

格付けは、債務の履行について現時点での確実性はどれくらいか、事業環境はどうか、財務状況は良好か、経済状況が悪化した場合に債務履行能力はあるのかなどを評価して決めているのです。

今ではヨーロッパ、日本、オーストラリアなど、世界の格付けの40%はムーディーズが行うようになりました

日本にはムーディーズジャパンが設立されていて、日本の投資家向けの格付けやその他情報サービスを提供しています。

世界中の投資機関が、ここの格付けを根拠にして、債券や株券の投資を決定していますから、それは大変な影響力があるのです。

ムーディーズはスタンダード&プアーズと同様に、サブプライムローン関連債権やCDO(債務担保証券)などに最上級であるトリプルAなどの高い格付けを行っていました。

それを突然、格下げしたことから金融危機の引き金になりました。格付けの対象となっている債券発行側からの手数料収入で経営していることもあって、米国議会にかけられその責任が問われました。

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